中小企業診断士の仕事内容は?公的・民間の業務と報酬をデータで解説

中小企業診断士 仕事内容と報酬の実態 キャリア・転職

中小企業診断士って、資格を取ったら具体的に何をする仕事なの?「独占業務がない」って聞くけど、それで食べていけるのかな…。

こんなギモンに答えます。中小企業診断士は「経営コンサルタントの国家資格」と説明されることが多いのですが、実際にどんな仕事を、誰から頼まれて、いくらでやっているのかは意外と知られていません。

さきに結論から言いますと、

この記事の結論

●診断士の仕事は「経営支援」「診断」「調査研究」「講演・研修」「執筆」の5系統。年間の業務日数は平均120.8日

●仕事の入口は公的業務(商工会議所・都道府県・中小機構などの専門家派遣)と民間業務(顧問契約・個別コンサル)の2つで、比率はほぼ半々

●報酬の目安は公的業務が1日約4万円、民間業務が1日約11万円と3倍近い差がある

●依頼の8割以上は「紹介」。支援機関・協会・他の診断士との人脈が仕事を運んでくる

この記事の数字は、すべて日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」(令和8年5月公表・回答1,847名)と、中小企業庁の中小企業診断士関連情報をもとにしています。わたし自身は1次試験合格後に養成課程を受験した立場で、独立診断士としての実務経験はないので、「体験談」ではなく「公表データ」で仕事の実態を整理していきますね。

中小企業診断士とはどんな資格か

中小企業診断士は、中小企業支援法にもとづいて経済産業大臣が登録する国家資格です。1次試験(7科目のマークシート)と2次試験(筆記)に合格し、実務補習または実務従事を15日以上こなして登録する「試験ルート」と、1次試験合格後に養成課程を修了する「養成課程ルート」の2つがあります。登録の有効期間は5年で、更新には研修と実務の両方の要件があります。

弁護士や税理士と違って、診断士には「この仕事は診断士にしかできない」という独占業務がありません。だからこそ「資格を取っただけでは仕事は来ない」と言われるのですが、裏を返せば、コンサルティング・研修・執筆・公的支援と、活動の幅を自分で決められる資格でもあります。

「独占業務がない=価値がない」ではなく、「独占業務がない=仕事の取り方が結果を決める」資格だと考えると、この後のデータが読みやすくなりますよ

診断士は何をしている人が多いのか(職業構成)

まず、診断士がどんな立場で働いているかを見てみましょう。連合会のアンケート(回答1,847名)では次の構成でした。

職業構成比
プロコン経営(他資格兼業なし)39.1%
プロコン経営(他資格兼業あり)17.4%
民間企業勤務(金融機関を除く)27.3%
公的機関・団体等4.3%
コンサルティング会社等勤務2.4%
金融機関(政府系・都銀・地銀・信金)3.3%
公務員2.1%

独立して経営コンサルタントを本業にしている「プロコン診断士」が58.9%、会社や役所に勤めながら資格を持つ「企業内診断士」が37.4%です。以前は企業内診断士のほうが多いと言われていましたが、この調査では独立組が6割近くまで増えています。

診断士の仕事内容は5系統

アンケートでは、診断士が1年間に行った業務を種類別に集計しています。回答者の平均日数はこうなりました。

業務の種類年間の平均日数主な内容
経営支援業務81.8日経営計画づくり、補助金申請支援、事業承継、資金繰り改善などの伴走支援
診断業務41.2日財務・組織・販売の現状分析と改善提案(診断報告書の作成)
調査研究業務31.9日行政や団体からの委託調査、業界分析、白書関連の調査
執筆業務21.8日書籍・雑誌・Web記事・教材の執筆
講演・教育訓練業務19.3日セミナー講師、社員研修、商工会議所の講座
合計120.8日

いちばん多いのは「経営支援業務」で年間81.8日。かつての診断士のイメージは「企業を診断して報告書を書く人」でしたが、いまは診断した後に一緒に改善を進める伴走型の支援が仕事の中心になっています。補助金の事業計画づくりや事業承継の支援は、この経営支援業務の代表例です。

「その他」の回答では、補助金の審査業務や窓口相談業務を挙げる人が多くみられました。診断士が補助金を「申請する側」だけでなく「審査する側」でも働いていることは、あまり知られていないポイントです。

仕事の入口は「公的業務」と「民間業務」の2つ

診断士の仕事は、発注元で大きく2つに分かれます。

診断士の仕事の2つの入口

公的業務:国・都道府県・市町村・商工会議所・中小企業基盤整備機構などが、専門家として診断士を中小企業へ派遣する仕事。窓口相談員、専門家派遣、セミナー講師など

民間業務:企業から直接受ける仕事。顧問契約、個別のコンサルティング、社員研修、執筆など

売上に占める割合を聞いた設問では、「公的業務のほうが高い」が34.9%、「民間業務のほうが高い」が31.1%と、ほぼ拮抗しています。つまり、診断士の半分近くは公的な支援制度を主な収入源にしていて、残り半分は民間企業との直接契約で食べている、ということです。

公的業務の入口になるのが「専門家登録」です。登録先として多いのは次のとおりでした。

専門家登録している機関回答率
商工会・商工会議所37.1%
都道府県(専門家・相談員等)24.9%
中小企業基盤整備機構16.9%
市区町村(専門家・相談員等)12.8%
よろず支援拠点6.2%
専門家登録はしていない20.0%

独立したばかりの診断士は、まず商工会議所や都道府県の専門家名簿に登録して公的業務で実績を作り、そこから民間の顧問契約へ広げていくのが王道です。具体的な受注ルートは独立診断士の仕事の取り方で詳しく解説しています。

報酬の目安:公的業務と民間業務で3倍近い差

気になる報酬です。アンケートでは、年間100日以上診断士業務を行っている人を対象に、業務ごとの1日あたりの報酬を集計しています。公的業務が中心の人と民間業務が中心の人では、金額に大きな差がありました。

業務(1日あたり平均)公的業務が中心の人民間業務が中心の人
診断業務約3.9万円約10.7万円
経営支援業務約4.3万円約11.9万円
講演・教育訓練業務約4.4万円約11.5万円
調査研究業務約3.1万円約9.2万円
執筆業務(400字あたり)約1.4万円約1.3万円

公的業務は1日あたり4万円前後、民間業務は11万円前後で、連合会の報告書自体が「金額に3倍近くの開きがみられる」と書いています。前回調査(2021年報告)と比べると金額はやや上昇しているとのことです。

公的業務は単価が低いぶん、専門家派遣として安定して仕事が回ってくるのがメリット。民間業務は単価が高いぶん、自分で営業して契約を取る必要があります。多くの独立診断士は、この2つを組み合わせて年間の売上を作っています。

年間売上の分布で見ると、独立診断士の半数以上が501〜1,500万円のゾーンに入り、1,001万円超も約3割です。年収の詳しい実態は独立した中小企業診断士は食える?年収の実態にまとめています。

この報酬額は「年間100日以上働いている診断士」の平均です。独立初年度からこの単価・日数になるわけではないので、そこは割り引いて読んでくださいね

仕事はどこから来るのか:8割以上が「紹介」

「独占業務がない資格で、どうやって仕事を取るのか」という疑問に対する答えがこのデータです。コンサルティング業務を行っている診断士に、依頼を受けたきっかけで最も多いもの(1位回答)を聞いた結果です。

依頼のきっかけ(1位回答)回答率
中小企業支援機関・商工団体等からの紹介20.1%
県協会からの紹介15.9%
相談窓口9.5%
他の中小企業診断士(診断士の団体)からの紹介8.7%
ユーザー企業からの直接依頼(Webサイト・SNS等)8.5%
現在や過去の支援企業からの紹介8.2%
金融機関からの紹介6.7%

Webサイトや SNS からの直接依頼は8.5%にすぎず、残りのほとんどが支援機関・協会・他の診断士・過去の支援先といった「人」からの紹介です。連合会の報告書も「仕事の獲得に際しては人的ネットワークの構築が重要」と結論づけています。

この構造を知っていると、診断士になった直後にやるべきことがはっきりします。ホームページを作り込むより先に、県協会に入会して研究会に顔を出し、支援機関の専門家名簿に登録することです。独立の具体的な手順は独立開業の手順と費用を参考にしてください。

企業内診断士の仕事内容:社内での活かし方

診断士の37.4%を占める企業内診断士は、会社勤めのまま資格を活かしています。資格を取ったときに勤務先からどう評価されたかを聞いた設問では、次のような結果でした。

資格取得時の勤務先・関係先の評価(複数回答)回答率
評価・処遇に変化はなかった35.5%
上司・同僚から良い評価を得た21.5%
関係先から良い評価を得た21.4%
資格手当が支給された14.7%
新規業務・新規取引の獲得につながった12.3%
資格が生かされる部署に配置された8.9%
昇給・昇格した4.8%

正直な数字です。「変化なし」が最多の35.5%で、昇給・昇格に直結した人は4.8%しかいません。企業内診断士の価値は、肩書きが変わることではなく、経営企画・事業開発・取引先支援といった仕事で経営の共通言語を使えることと、副業で実務経験を積めることにあります。

実際、会社勤めの診断士のうち副業が認められている人は79.1%(前回調査47.0%)まで増えています。企業内診断士が副業で診断業務を始め、実績を積んでから独立する流れは副業診断士から独立する方法で、転職での活かし方は中小企業診断士は転職に有利?で解説しています。

診断士の専門分野と、資格に求めている価値

「診断士の仕事」といっても、一人ひとりの専門はバラバラです。アンケートで専門分野を3つまで選んでもらった結果、1〜3位に共通して多かったのは「経営企画・戦略立案」「財務」「販売・マーケティング」の3分野でした。これは1次試験の科目でいえば企業経営理論・財務会計・運営管理にあたる領域で、試験で学んだ知識がそのまま専門分野になっている診断士が多いことがわかります。

もうひとつ面白いのが、「収入以外で資格に求める価値」を聞いた設問です。1位回答で最も多かったのは「社会貢献」25.0%、次いで「人間形成やネットワーク作り」21.4%、「経営全般の勉強・スキルアップ」20.6%でした。診断士の仕事は「中小企業の経営者の相談相手になる」ことそのものにやりがいを感じている人が多い資格なんです。

診断士の仕事を続けるために必要なこと

最後に、見落とされがちな点をひとつ。診断士の登録は5年ごとの更新制で、更新には「理論政策更新研修などの知識補充を5回以上」と「診断助言業務などの実務従事を30日以上」の両方が必要です。アンケートでは、実務従事の要件を「本業で取得できる」人が62.4%いる一方、「阻害要因がある」と答えた人も22.0%いて、その理由の1位は「実務従事の機会そのものがない」53.7%でした。

つまり、資格を取って終わりではなく、何らかの形で診断業務に関わり続けることが資格を維持する条件になっています。企業内診断士の場合は、県協会の診断実務従事事業や研究会のグループ診断に参加して実務ポイントを確保している人が多いです。更新要件の詳細は中小企業庁の更新登録申請のページで確認できます。

よくある質問

中小企業診断士には独占業務がありますか?

ありません。弁護士や税理士のように「この業務は資格者しかできない」という独占業務はなく、経営支援・診断・調査・講演・執筆を、自分で仕事を取って行う資格です。そのぶん、公的支援機関の専門家派遣など、診断士を前提とした仕事の枠は多く用意されています。

中小企業診断士の仕事で一番多いのは何ですか?

連合会のアンケートでは「経営支援業務」が年間平均81.8日で最も多く、次いで診断業務41.2日、調査研究業務31.9日でした。経営計画づくりや補助金申請支援、事業承継など、企業と一緒に改善を進める伴走型の支援が中心です。

中小企業診断士の1日の報酬はいくらですか?

年間100日以上業務を行っている診断士の平均で、公的業務が中心の人は診断業務1日あたり約3.9万円、民間業務が中心の人は約10.7万円です。公的業務と民間業務では3倍近い差があります。

会社員のままでも中小企業診断士の仕事はできますか?

できます。診断士の37.4%は企業内診断士で、会社勤めの診断士の79.1%は副業が認められています。県協会の研究会や診断実務従事事業に参加して、休日に診断業務を行う人も多くいます。

中小企業診断士の仕事はどうやって獲得するのですか?

依頼のきっかけは「中小企業支援機関・商工団体からの紹介」20.1%、「県協会からの紹介」15.9%など、紹介が大半を占めます。Webサイトや SNS からの直接依頼は8.5%です。県協会への入会と、商工会議所・都道府県などへの専門家登録が仕事の入口になります。

まとめ 中小企業診断士の仕事内容

中小企業診断士の仕事は、経営支援・診断・調査研究・講演・執筆の5系統で、発注元は公的業務と民間業務がほぼ半々。報酬は公的業務で1日約4万円、民間業務で約11万円が目安です。仕事の8割以上は紹介で入ってくるため、資格取得後は県協会と支援機関のネットワークに入ることが最初の一歩になります。

独占業務のない資格だからこそ、「何を専門にして、どこから仕事を取るか」を自分で設計できる。それが中小企業診断士という仕事の実態です。

以上、いろなしでした!